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ジッパー1

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2004年 
東京都港区六本木 六本木トンネル

昨日、東京都都庁から「北川さんの壁画が予定変更して保存されることになりました」と電話があった。

この作品は随分前に都庁が企画したストリートアートペインティングという事業のもと制作されたものである。
今年の夏ぐらいに、都庁から老朽化を理由に消す予定である。と通知があった物件である。
この作品が結局消されることもなく保存されることになったというわけだ。こうなったいきさつを解説する。

私以外にもこの企画によって5人ぐらいの作家が壁画を制作したわけだが、そのうちの1人の作家が消去されることを拒否したためだ。私と言えば、消してもいいか電話があったとき、あっさり、「いいですよ。」と答えたのだ。たぶん作家の中でも即答タイプであったろう。
こう書くと作品に思い入れが無いと思われるかもしれないが、そうではない。この、「ジッパーⅠ」は割と世の中の認知度が高く、いまだに「この作品のことは知っている」という人によく会うし、メディアでの露出度も高い。
私の他の作品は、インスタレーション的なものが多いため現存するものは少ない。その中にあって、壁画というものは長くそこに存在する。私にとっても、名刺代わりになっている作品である。

では、なぜ、そんなにあっさりと世の中から削除されることを承諾したのであろうか。たぶん、それは私の中に『形あるものはいつかなくなる。またそうであるからこそ美しい』という美意識があるためだろう。
所有者から望まれなくなったときがその作品の寿命であるとさえ思っている。保存決定の電話があったとき「あっそうですか。」と他人事のように返事をしたことを覚えている。

しかし、やはり私は本音を言うと・・・うれしかった・・・。
ごねた作家にはお礼を言わなければならない。